中央労福協

 

 

生活保護の医療費自己負担問題を考えるシンポ

ムードに流されず冷静な政策論議を!

 「評判の悪い生活保護については、何か手をつけないと消費税増税への国民の理解が得られない」という理由で、非常に強引に生活保護受給者の医療費一部自己負担導入が決められようとしている。こうした動きに対し、冷静な論議を呼びかけるシンポジウムが「生活底上げ会議」の主催で3月13日に東京の航空会館で開催され、約90名が参加した。

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本シンポジウムはUstreamで視聴できます。ぜひご覧ください。
(http://www.ustream.tv/recorded/21077677)

 配布資料

 シンポジウムは、生活底上げ会議の共同代表である大塚敏夫中央労福協事務局長が進行を務めた。

 最初に湯浅誠・反貧困ネットワーク事務局長が、生活保護の医療費自己負担導入が進められようとしている背景や経過を解説。医療扶助費の6割近くの約8000億円が入院費であり、約25%の3000億円が精神医療入院費であるという事実や、自己負担になるとどうなるかのシミュレーションを紹介し、「自己負担導入で問題が解決するのか、実態に即して考える必要がある。鬱積するフラストレーションが“弱者たたき”に向かいやすい現在、ムードに流されず、冷静に実のある政策議論を!」と訴えた。

 続いて門屋充郎氏(日本相談支援専門員協会代表、NPO法人十勝障がい者支援センター理事長)が、40年にわたり十勝で精神障がい者の地域生活支援に取り組み、結果として病床数や医療費が縮小してきた経験を紹介。脱施設化が進む世界の流れに反し、入院治療に偏よりすぎた日本の精神医療の実態に触れ「社会的入院は人権侵害だ」と批判した。そして実証的なデータに基づき、精神障がい者の地域生活移行は適切な相談支援体制があれば十分に可能であり、それによって医療費自己負担導入などしなくても生活保護の医療扶助費を減らすことは可能であることを示した。また「憲法25条で保障された最低生活費から更に差し引くというのは明らかに憲法違反で、そんなことが議論になる政治がとても信じられない」と述べた。

 これまで15回の入退院を繰り返してきた鈴木隆一さん(47歳)は、「1度入院すると最低半年は出してもらえない。病院は、しんどくなった時に蘇生するところであってほしい。入院か地域生活か、人によって価値判断は異なるが、自分は地域で暮らし続けたい。そのための命綱である生活保護を切らないでほしい」と訴えた。

 最後に、生活底上げ会議共同代表の尾藤廣喜弁護士(生活保護問題対策全国会議代表幹事)が、「いい議論ができた。感情論が先に立った議論が進んでいるが、実態を知るところから始め、何が本質なのか、冷静な論議を広げていこう」と締めくくった。