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中央労福協は2月15日、地方消費者行政の充実に関して、消費者委員会に意見書を提出しました。
これは、消費者委員会が昨年より専門調査会で、地方消費者行政強化期間後の地方消費者行政活性化策について検討を重ね、今般、報告書案(骨子)への意見募集(パブコメ)に付されたことから、それに対して意見書を提出したものです。
意見書では、消費者被害による経済的損失が3兆4千億円にものぼること、最小不幸社会の実現のためにも、国と地方が協力し責任をもって取り組むべきこと、そのため、国が継続的かつ実効的に財政支援を行うこと、消費生活相談員の処遇の改善に取り組むことなどを求めています。
意見書の内容は以下に掲載しました。
なお、消費者委員会専門調査会の報告書案(骨子)、日本生協連の意見書も参考にご覧下さい。
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2011年2月15日
内閣府消費者委員会事務局 御中
労働者福祉中央協議会
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地方消費者行政専門調査会報告書案(骨子)に関する意見
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労働者福祉中央協議会(略称:中央労福協)は、貸金業法改正や割賦販売法改正等に消費者団体と連携して取り組み、皆様方のご尽力もあり大きな成果をあげることができました。しかし、せっかくつくった制度も、最前線の相談現場が疲弊していては機能しません。このため、地方消費者行政の充実強化にも重点課題として取り組んでおります。
こうした立場から、今回の意見募集に対して以下のとおり意見を申し述べます。
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1.地方消費者行政強化に向けての基本的な観点
(「はじめに」および「1.消費者行政における国と地方のあり方」について)
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(意見)
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消費者被害に伴う経済的損失額は3兆4千円とも推計されており、悪質商法の根絶や地方消費者行政の充実は、消費者のみならず善良な事業者や労働者をも含めた国民的利益であり、「最小不幸社会」を実現するために国と地方が協力し責任をもって取り組む課題であるという視点を盛り込むべきです。
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国は消費者被害に伴う経済的損失額について毎年推計値を公表し、消費者行政の強化・充実に向けた世論喚起をはかるべきです。
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(理由)
平成20年版国民生活白書によると、2007年度の消費者被害に伴う経済的損失額は年間約3兆4千億円、GDPの0.7%と推計されています。これだけの巨額が消費者から悪質業者の懐に入るのみならず、善良な事業者のビジネス機会を喪失させ、ひいては良質な雇用創出の妨げにもつながるのです。これは国民の不幸の最たるものであり、「最小不幸社会」の実現を政策目標に掲げる政権にあって、決して看過できる問題ではないはずです。
しかしながら、こうした事実をほとんどの国民が知りませんし、自治体トップの認識も薄いため、地方消費者行政が軽く扱われがちです。この現状のもとでは、国と自治体が協力して、消費者行政への認識を改めるよう取り組む必要があります。
報告書骨子(案)の「住民の身近なところで」「各自治体の自主性や創意工夫を生かせるよう」というのは確かにその通りなのですが、「国も悪質商法の根絶に向けて自治体とともに闘う、そのための支援は惜しまない」というメッセージを鮮明に打ち出していただきたいと思います。
中央労福協も、地方消費者行政の充実は、単に消費者団体のみならず善良な事業者や労働者にとっても共通の課題であるとの認識のもと、各地域で取り組みを強化していきたいと思います。
消費者庁や消費者委員会は、ぜひ先頭に立って国民世論を喚起してください。そのためにも、2008年度以降公表されていない消費者被害に伴う経済的損失額を毎年推計・公表し、国民に“気づき”の素材を提供してください。
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2.国の財政支援に関して
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相談ネットワークの構築や情報収集体制の整備等について、国が責任を持って推進する必要があるとする点は賛成ですが、「一定程度の負担や技術的支援等を検討する必要」という指摘では不十分です。
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一定の水準のサービスが行える地方消費者行政が定着するまでの間は、国の財政支援を継続的に行うことを明記すべきです。
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今後の国の財政支援の具体化にあたっては、地方消費者行政の充実に確実につながる形で措置する旨を明記すべきです。
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(理由)
・ いまだに多重債務に苦しみ過払い金があることも知らずに自ら命を絶つ人たちが相次いでいます。相談窓口の整備は「命」に関わる問題であるという現実を重く受け止めてください。
・ 地域主権はそれ自体が目的ではなく、あくまでも住民の暮らしのための手段のはずです。
依然として地方消費者行政は充実・強化の途上(よちよち歩きの段階)であり、未だに自治体の間では大きな格差があります。そのためにも、一定の水準のサービスが行える地方消費者行政が定着するための間、「集中育成・強化期間」(〜2011年度)後の財政支援の継続についても具体的に記述するべきです。
・ 一括交付金での財政支援では、他の部門へ優先的に活用する自治体が多く、消費者行政にほとんど利用されません。今般の「住民生活に光をそそぐ交付金」では、使途の筆頭に消費者行政が挙がっているにも拘わらず、実際の活用は進んでいません。例えば地方消費者行政活性化基金を延長するなど、一定の幅をもたせながらも消費者行政に確実に注がれる財政支援を継続的かつ実効的に行うことが必要です。なお、自治体消費者行政に係る経費の大半が消費者相談員等の人件費であることを十分に考慮し、人件費にも活用できるものにすべきです。
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3.消費生活相談員の処遇のあり方について
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(意見)
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消費生活相談員の専門性の向上や、それに見合った処遇改善の必要性や、雇止めが適当でないことについて、国が具体的な指針を示すことには賛成ですが、単に指針を示すだけでなく、地方自治体に対しより積極的な働きかけと財政支援を求めます。
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消費生活相談員も含め、常勤はもちろん非常勤であっても、専門性に見合った待遇のもとで安定して勤務できる専門職任用制度の整備が必要であることを明記すべきです。
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(理由)
複雑化する相談内容に対応するためには、専門的な知見やスキルが必要であり、それを培うためには、研修と長年の現場での経験の積み重ねが重要な要素であることから、人材育成としても長期雇用と専門性に見合った報酬が必要です。
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以上
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