今般の内閣府令改正案のうち、「総量規制に抵触している者の借入残高を段階的に減らしていくための借換えの推進」(規則第10条の23第1項第1号の2)とされている部分は、複数の借り入れの一本化(以下、「おまとめローン」)を推進する内容となっています。その改正理由としては単に借入残高が変わらずに、毎月の返済額や利率が軽減することで、借主に新たな負担が生じず、残高を段階的に減らすことができることで借主の利益となるというもののようです。
しかしながら、総量規制に抵触するほどの借入を行っているものに必要なことは、借換えよりも生活再建を図る法的債務整理であり、まずは適切な相談窓口に誘導することが必要です。そしてそれは多重債務者対策本部を設置する政府の役割です。
また、改正案では利息制限法充当再計算について一言も触れられていません。借換えの対象となる債務については、利息制限法充当再計算により法律上有効な債務額を明らかにしなければ、必要のない部分まで借入をさせることとなり、借主の債務残高を増やすこととなります。
「おまとめローン」の対象とされる債務者の多くは、これまで利息制限法を超過する「グレーゾーン金利」による約定利息によるものです。そしてこれらの債務は利息制限法充当再計算をすれば減少・消滅し、更には過払いとなる場合も存します。
今般の「おまとめローン」では利息制限法による充当再計算が行われずに、名目上の借入残高についてそのまま借換えをさせることで、利息制限法充当再計算の機会が奪われ、多重債務状態が悪化してしまいます。
また、借主が利息制限法充当再計算により正しい債務額(あるいは過払金の有無)の認識を妨げることとなります。このような借換えは消費者契約法の「不実告知」「不利益事実不告知」に該当する不当勧誘となると解されます。
また、「担保・保証に係る要件」についても借換え後の条件が厳しくならないことを求めていますが、「おまとめローン」を必要とする借主は、実際は返済能力が既に失われていることが多いことから、保証人や担保を徴求される場合があります。この場合は、もとより保証人や担保からの回収を目的とする貸付、いわゆる「略奪的貸付」が行われることになりかねません。
これまでも不動産担保ローン付き融資について貸金業者間で利率を下げながら借換えを繰り返す「キャッチボール」事案が存在しました。したがって、保証人や担保不動産目的の略奪的融資の予防には不十分だと考えられ、「保証・担保付融資」には適用しないことを求めます。
以上
|