生存権保障の底上げにつながる「新たなセーフティネット」を求める集会宣言
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緊急の「経済危機対策」として構築された「新たなセーフティネット」が、本年10月から本格実施される。雇用保険と生活保護の間に「新たなセーフティネット」を新設しようという試みは、脆弱だったわが国のセーフティネットの充実のために歓迎すべきことである。
既に昨年末から始まっている「就職安定資金融資」に加え、本年7月からは「緊急人材育成・就職支援基金」が新設された。雇用保険を受けられない人にも、職業訓練を受講する場合には月10〜12万円を給付し、また5〜8万円の上乗せ貸付も行う制度だ。しかし、新政権下で天下り機関への補助金を理由とした「凍結」が取り沙汰されている他、周知不足で利用者も十分に増えていない。戦後最高の失業率を記録し、諸外国に比べてはるかに雇用保険カバー率の低い日本において、本来大いに活用されるべきであるにもかかわらず、現実はそうなっていない。
新設される「住宅手当」は、福祉事務所を窓口とし、2年以内に離職した者に対し生活保護の住宅扶助費と同額の住宅手当を給付する。従前から社会福祉協議会を窓口として実施されてきた「生活福祉資金」の抜本的見直しに伴い、月20万円までの生活費や敷金等の住宅入居費等を貸し付ける「総合支援資金」や、公的給付・貸付制度の申請をしている住居のない離職者に対し当面の生活費を10万円まで貸し付ける「臨時特例つなぎ資金」も創設される。
しかし、各制度は窓口がバラバラなうえ給付と貸付が複雑に入り混じっていて、「間に合わせのつぎはぎ」である感は否めない。3年間の時限措置とされているため権利性は保障されておらず、既存の生活保護制度との守備範囲も不明確である。新制度の創設によって生活保護の利用が不当に抑制され、生活保護水準以下の新制度の利用へ誘導される事態を回避すべきことは当然である。
私たちは、新制度が生活保護によって既に保障されている生存権保障の水準を掘り崩すものではなく、それを「底上げ」するものとなるよう、国に対し、次の諸事項を求める。
1 利用者の視点に立って、使いやすい「第二のセーフティネット」を構築し直し、十分な広報周知を図り、生活の下支え機能を果たすこと
2 雇用保険制度を大幅に拡充すること
3 新制度の創設によって生活保護制度の利用が不当に抑制され,生活保護水準以下の新制度しか利用できない事態が生じることは厳に回避すること
4 最低生活費以下の収入しかない者に対する施策は貸付でなく給付を中心とする方向に改善すること
5 給付制度の権利性を明確にし,利用要件を生活保護よりも緩和すること
6 相談窓口の一本化,人員体制の充実等によって「タライ回し」を避け利用しやすい制度とすること
7 現場の実情を反映させた運用改善を繰り返しながら,恒久的施策としていくための検討機関を設置すること
2009年9月17日 集会参加者一同
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