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2007年12月7日

生活保護基準の引き下げに反対する(声明)

 

労働者福祉中央協議会
会 長  笹 森 清

.厚生労働省の「生活扶助基準に関する検討会」は11月30日、生活保護基準の引き下げを求める報告書を出し、これを受けて舛添要一厚生労働大臣は、来年度からの引き下げを明言した。生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、国民の生存権保障の水準を決する極めて重要な基準である。しかるに、5人の学識経験者のみによる局長の私的研究会で、当事者などからのヒアリングも一切行わず、わずか5回、1ヶ月半足らずの議論でかかる結論を出したことは、到底納得できるものではない。
 中央労福協は、安直かつ拙速な生活保護基準の切り下げには断固として反対する。

 

.「生活保護との整合性に配慮する」ことを明記した改正最低賃金法の成立(11月28日)から、わずか2日後というタイミングで生活保護水準の引き下げを打ち出したことは、せっかくの最低賃金底上げへの気運に水を差すものであり、極めて遺憾である。生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額も下がることにもなりかねず、法改正の趣旨をないがしろにするものである。

 

.保護基準引き下げの根拠として、検討会報告書は下から1割の低所得者層の消費支出統計よりも現行生活保護基準のほうが高いことを挙げている。しかし、最低賃金すら遵守されず、生活保護申請も窓口で門前払いされる「水際作戦」等の違法行為が横行している実態を是正することが先決であり、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「ワーキングプア」の現状にあわせて、あるべき保障水準を算定するというのでは、まさに本末転倒というほかない。このような根拠で引き下げを許せば、最低生活ラインを際限なく引き下げていく「貧困のスパイラル」に陥り、夢も希望ももてない社会を招来することになりかねない。

 

.生活保護基準は、単に生活保護受給者のみの問題ではない。地方税の非課税基準をはじめ、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動しており、庶民の生活にも大きな影響を与える。また、社会保障が揺らぎ、雇用も不安定化する中にあっては、最後の拠り所としての生活保障のあり方は、国民全体の問題として捉えなければならない。それだけに、見直しにあたっては、生活保護利用者や国民各層の声を十分に聴取し、公開の場で徹底した論議を行うことが必要である。

 

.中央労福協は、サラ金の高金利引き下げや悪質商法追放(割賦販売法改正)に取り組んできた立場から、格差・貧困社会の是正に向けた運動の大きな柱として生活保護制度の改善を位置づけている。多重債務対策も、その根本的な解決には背景にある貧困問題の改善が不可欠であり、生活保障と一体的に取り組んでいく必要がある。こうした観点から、社会的セーフティネットの強化に向けて、法曹界・労働団体・福祉団体・市民団体等とも連携し、生活保護水準の確保や、「水際作戦」などの違法な運用の是正に取り組んでいく。
 

 

以上

 

 

 

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